リンリンマン

家から職場まで自転車通勤してる。

ゆっくりこいで片道30分前後。

めっちゃ急げば20分くらい。

毎朝たくさんの人とすれ違う。

全然知らない人ばっかり。

でもそのうち何人かは毎日すれ違うので、お互い相手の顔を覚えてる。

帰りは帰る時間が一定じゃないので特に顔を覚えてる人はいない。

たまに朝すれ違う人を見かけるくらい。

けど帰り道ですれ違う人で、唯一認識できる人がいる。

俺が心の中で「リンリンマン」って呼んでる人。

顔はあんまり覚えてない。

帽子を被ってる中年の男の人。

すれ違うときに、どんなに間が空いてても

「リンリン」

ってベルを鳴らされる。

なぜだ。

顔を覚えてないので、いつもベルを鳴らされてから

「あ、リンリンマンや!」

と思う。

嫁にこの話をしたら

「私も知ってる!その人が歩道走ってて、私が車道走ってても『リンリン』ってベル鳴らされる」

って言ってた。

やっぱりすれ違うときは離れてても常にベルを鳴らしてるらしい。

この前帰ってたらまたリンリンマンとすれ違った。

いつも通り

「リンリン」

って鳴らされて、

「あ、リンリンマンや!」

と思った瞬間にこっちも

「リンリン」

とベルを鳴らし返してみた。

するとリンリンマンは離れていきながらもう一度

「リンリーン」

って返してきた。

交信に成功したんだぜ…!

リンリンマンは挨拶代わりにベルを鳴らしてるのかも。

今度リンリンマンの存在に気づいたら先にベル鳴らしてみよう。